2026.07.23
レンタルキッチンや間貸しの営業許可は誰の名義で取るべき?行政書士が解説
最近、飲食店営業許可や菓子製造業許可を取得したレンタルキッチンが増えています。
あるいは、すでに飲食店として営業をしていて、週末だけ、あるいは平日の昼だけ、空いている時間を「間貸し」として有効活用しているお店もあります。
このようなレンタルキッチンには、大きく分けて2パターンの運営方法が存在します。
一つは、施設のオーナーが自分の営業許可を取得し、その許可の下で利用者に使ってもらうスタイル(営業許可の貸出に近い形)。
もう一つは、施設は基準を満たした「場所」として提供するだけで、利用者がそれぞれ自分の名義で営業許可を取るスタイルです。
前者の運営方法の場合、あとで効いてくる落とし穴があります。
落とし穴の正体を先にひとことで言えば、事故が起きたときに誰が矢面に立つか、です。
1|営業許可は、施設と営業者の両方に付く
飲食店の営業許可は、まず施設に対して与えられます。
厨房や手洗いといった設備が基準を満たしているかを保健所が審査し、その施設に許可を出す。
だから施設が変われば、許可も取り直しになります。ここまでは、施設に付くもの、という理解のとおりです。
見落とされがちなのは、許可がもう一方で「営業者」にも紐づいている点です。
許可証には営業する人の名義があり、その名義人が営業主体になります。
そのため、店の経営者が別の人に変わるときは、原則として新しい名義で取り直しが必要ですし、相続や事業譲渡で引き継ぐ場合にも、地位を承継する届け出という手続きが要ります。
純粋に施設だけに付くものなら、人が変わっても手続きは要らないはずです。
つまり営業許可は、施設と営業者の両方に紐づいています。 そして、レンタルキッチンで効いてくるのは営業者のほうの面です。
施設は同じでも、そこで実際に営業しているのが誰の名義なのか。これが、あとで責任の所在を決めます。
どちらでなければならない、と法律が一律に決めているわけではありません。
厳密に言うと、利用者ごとに営業許可が必要かどうかは、最終的にその地域の保健所の判断になります。
利用の実態、入れ替わりの頻度、責任の所在をどう見るかで、保健所ごと(さらに担当者ごとに意見が違うこともままあります)に扱いが分かれるところです。
2|食中毒が起きてしまったケースを想定してみる
では、なぜスタイルの選び方がそこまで重要なのでしょうか。
平時にはどちらでも回ってしまうので、差が見えにくいのですが、差がはっきり出るのは、事故が起きた時です。
利用者の一人が販売した食品で食中毒が発生したとしましょう。
保健所は原因を調べ、営業の停止や許可の取り消しといった処分を検討します。
このとき処分の相手になるのは、その営業を行っていた許可の名義人です。
自分の営業許可のまま貸し出していた場合、その営業を行っていた名義人は、貸していたオーナー自身ということになります。
実際に手を動かして調理したのは利用者でも、許可の上での営業主体はオーナーです。
自分は場所を貸しただけのつもりでも、許可証に名前が載っている以上、その理屈は外から通りにくいのです。
利用者がそれぞれ自分の名義で許可を取っていれば、話は違ってきます。
調理の主体が利用者自身であり、事故が起きたときの責任もその利用者が負う。
線の引き方が、あらかじめはっきりしています。
ここで一つ補っておかなければならないことがあります。
利用者ごとに許可を取ってもらう形にしたからといって、同じ施設で事故が発生している以上、施設を提供する側の責任がゼロになるわけではありません。
ただし、名義を分けているほうが責任の所在は明確になりやすいのです。
つまり、提供した設備や衛生管理に原因があれば、そこは施設(場所)が責任を問われることになります。
それでも、調理の主体が利用者本人としてはっきりしている分、原因が利用者の側にあるのか施設の側にあるのかを切り分けやすい、ということです。
自分の許可のまま貸していると、この切り分けの前に、まず名義人であるオーナーが矢面に立ってしまう、ということです。
3|おすすめは、利用者ごとに取得してもらうこと
こうして並べてみると、ふたつの運営方法の違いは手続きの手間の差ではありません。
事故が起きたときに、誰の許可が止まり、誰が矢面に立つか、という差です。
もちろん、利用者ごとに許可を取ってもらう形は、借りる側にひと手間かけてもらうことになります。
食品衛生責任者の資格や、自分名義での申請には書類作成の手間や、申請料金も別途必要となります。
すぐに使いたい人には、そこがハードルに映るかもしれません。
それでも、貸し出す側の立場で考えるなら、利用者ごとに営業許可を取ってもらう形をおすすめします。
自分の許可の下でまとめて回すほうが一見らくですが、そのらくさは、事故が起きるまでの間だけのものです。
一度事故が起きれば、まとめて背負う相手は自分になりかねません。
冒頭の「空いている時間を貸す」という軽い話も、許可の名義をどう置くかで、背負うものがまるで変わります。
どちらの形で運営するかは、貸し出す前にかならず詰めておくべき事項です。
4|それでも自分の許可で貸すなら
とはいえ、運営上の判断で、自分の営業許可の下で貸し出す形を選ぶこともあると思います。
その場合でも、リスクを裸のまま抱えるしかない、というわけではありません。
貸すうえで、いくつか対策をすることは可能です。
一つは、利用者に食品衛生責任者の資格を取ってもらうことです。
許可の名義がオーナーのままでも、実際に調理する利用者がこの資格を持っていれば、衛生管理の知識を備えた人が現場に立っている状態を作れます。
事故の予防そのものに効きますし、利用者に一定の責任意識を持ってもらう仕組みにもなります。
もう一つは、PL保険(生産物賠償責任保険)への加入です。
提供した飲食物が原因で利用者や第三者に健康被害が出たとき、賠償の負担を保険でカバーするものです。
加入する保険会社に、どこまでカバーされるかを事前に問い合わせる必要はありますが、オーナー側で加入しておく、あるいは利用者に加入を条件として求める、といった形が考えられます。
名義の上での責任が自分に向かってきやすい運営であればなおのこと、金銭的な備えを一枚挟んでおく意味は大きくなります。
また、事故が起きた際には責任は利用者のものとする、といった利用規約を作成しておくことも有効です。
ただし、この取り決めで縛れるのは利用者との間の話で、被害を受けたお客様に対する行政上・法律上の責任まで規約で動かせるわけではありません。
また、規約だけでは責任追及が難しい場合もあります。
利用者が責任を負うことを拒んだ場合、極論ではありますが、最終的には民事訴訟といった手続きが必要になり、手間も時間もかかります。
そのため、前述の対策と併せて利用規約の作成を行い、さらに資格や保険加入が確認できない場合は貸し出さない、といった運用が望ましいです。
5|レンタルキッチン運営経験がある行政書士がご相談を承ります
弊所は、代表行政書士の加藤が過去にレンタルキッチンの運営を実際に経験しており、飲食店営業許可の取得に際し、今後の運営方法等のご相談も承っております。
自分の許可で回すか、利用者ごとに取ってもらうか――その線引きを、貸す側が現場で何に困るかを知ったうえでサポートが可能です。
また、保健所との打ち合わせ等もすべて弊所で対応いたしますので、保健所や担当者ごとに判断が分かれるケースでも安心してお任せいただけます。
レンタルキッチンの運営を始めたい方、まずはお気軽にお問い合わせください。
