2026.04.15
その事業、届出は必要?電気通信事業届出をやさしく解説
チャット機能付きのアプリ、予約システム、ECサイトやマッチングサービス――実は、こうしたサービスを運営しているだけで「電気通信事業届出」が必要になるケースがあります。
届出漏れは法令違反につながる可能性も。まずは、自分のサービスが対象かどうか確認してみましょう。
1|そもそも「電気通信事業」とは?
電気通信事業法第2条において「電気通信事業」とは、「電気通信役務を他人の需要に応ずるために提供する事業」と定義されています。
電気通信役務とは、簡単に言うと通信によるサービス提供のことで、この電気通信役務(情報の送信)自体が事業(目的)となる場合、「電気通信事業」となります。
例えば、自社ECサイトの運営は電気通信役務の提供となりますが、これは「モノを売る」という本来の業務の遂行のために電気通信サービスを提供しているにすぎません。
そのため、「電気通信事業」には該当せず、電気通信事業法は適用されないことになります。
逆に、ニュース配信サイトなどは顧客に電気通信役務を提供しなければ成り立たないサービスです。
電気通信役務(情報の送信)自体が事業の目的となり、電気通信事業法が適用となります。
そして、同法第9条および第16条では、下記のように記載されています。
第九条 電気通信事業を営もうとする者は、総務大臣の登録を受けなければならない。
第十六条 電気通信事業を営もうとする者(第九条の登録を受けるべき者を除く。)は、総務省令で定めるところにより、次の事項を記載した書類を添えて、その旨を総務大臣に届け出なければならない。
2|「電気通信事業を営む者」とは?
それでは、電気通信事業法における「電気通信事業を営もうとする者」とはなんなのでしょうか。
他人の需要に応じるため・電気通信事業を・営むの3つのポイントに分けて考える必要があります。
なお、ひとつでも当てはまらない場合は電気通信事業法は適用されません(届出および登録不要)。
「他人の需要に応じるため」――(自己のためでなく)他人のために役務を提供しているか
他人と他人の通信の媒介をするサービスがこれの代表例です。
例えば、ユーザー同士(他人と他人)のチャット機能付きのアプリや、クラウド型の予約‧受注システムなどです。
自社のコーポレートサイト運営や、社内システム(社内だけで完結する通信環境)を自社で運営する場合など、自己の需要のために提供する場合はこれに該当しません。
「電気通信事業」――電気通信設備を用いてサービスを提供しているか、また、この提供を反復継続しているか
「電気通信設備」とは、簡単に言うと通信のために使われる機器やインフラ全般のことです。サーバやルーター、光ファイバーケーブルなどがその代表例です。
ここで、押さえておきたいポイントが2つあります。
①自分で所有していなくてもOK
→「サーバーを自社で持っていないから関係ない」とはなりません。
自らが所有するものでなくても、利用する(または利用させる)権限を有するものを含みます。
例えば、AWSやGoogle Cloudといったクラウドサービスを利用してサービスを提供している場合も、「電気通信設備を使っている」とみなされます。
現代のWebサービスやアプリの多くは、このケースに該当します。
②ユーザー同士の通信だけが対象ではない
→「ユーザー同士がやり取りする機能がないから大丈夫」とも限りません。
事業者(自分)とユーザーの間の通信によってサービスを提供している場合も対象に含まれます。
つまり、一般的なWebサービスやアプリの提供そのものが、この要件に該当しうるということです。
また、反復継続しているか、というポイントの通り、積極的意思をもって同種の行為を反復継続しているか、という点も重要です。
例えば、緊急・臨時的に行うサービスなどは「反復継続」とは言えず、上記に該当しないことになります。
「営む」――利益を得ようとしているか
サービス提供の対価として料金を徴収している(サービス自体が無料でも、広告収入を得ている場合も含みます)利益を得ようとしている場合は「営む」に該当します。
なお、現時点で利益が出ていなくても、「利益を得よう」としている場合も含まれます。
逆に、無償・原価ベースでサービスを提供する場合は対象外です。
ここまですべてに該当する場合は「他人の需要に応じるため」「電気通信事業」を「営む」者に該当し、電気通信事業届出または登録をする必要がある事業者に該当するおそれがあります。
3|届出と登録の違いは?
それでは、電気通信事業法第9条および第16条に記載されていた届出と登録の違いとはなんなのでしょうか。
簡単に言うと、電気通信回線設備を設置していると、「登録」が必要になる可能性があり、そうでない場合は「届出」が必要になる可能性があります。
電気通信回線設備とは、前述の「電気通信設備」と異なる、物理的な「伝送路設備(ケーブル・電柱等)」や「交換設備」、「付帯設備」の総称を指します。
通信事業者が設置・管理しているものがほとんどです。
他にも細かい要件(設置の区域が一の地域を超えているか等)はありますが、この記事を読まれている事業者様はほとんどが「届出」が必要なサービスを運営している事業者に該当すると思われますので、登録の要件については今回は割愛させていただきます。
4|「電気通信事業者」に該当したら、次はこの要件をチェック
それでは、「電気通信事業者を営む者」に該当している事業者は、どのような場合に届出をしなくてはならなくなるのでしょうか?
それは、「他人の通信を媒介」しているか、という要件に当てはまる場合です。
「他人の通信を媒介」とは
①加工・編集を行わない
②送信時の通信の宛先として受信者を指定している
上記2つの条件に該当している場合を指します。
加工・編集を行わない
上記は、情報の本質的な内容の改変を行わないことを指します。
メールに例えてみましょう。
メール自体はAさんとBさんとのやり取りですが、実際には下記のような移動が行われています。
Aさん メールを送信
↓
事業者が設置するサーバー
↓
Bさん 到着
この事業者の設置するサーバーにおいて、メールの内容が加工されないことを「加工・編集を行わない」といいます。
なお、メールヘッダに配送情報を追加したり、フォーマットの変換、ファイルを圧縮したりといった、外形的・形式的な改変を行うことは、「加工」には含まれません。
逆に、ファイルの情報自体を編集したりすることは「加工・編集」にあたります。
送信時の通信の宛先として受信者を指定している
例えば、メールやダイレクトメッセージのように宛先を指定して送信するメッセージなどを想像していただくと分かりやすいと思います。
一方、ECサイトの商品ページのように、「誰かが投稿したコンテンツをサーバーが処理・加工して、不特定多数に表示する」ような仕組みは、宛先が指定されていないため「媒介」にはあたりません。
5|実際に届出が必要になるのはこんなケース
それでは、実際にどんな事業が届出が必要なのか、具体的に解説します。
利用者間でチャットが可能なサービスやアプリ
具体例として記述してきましたが、ここでもう一度要件に当てはまるかを確認しましょう。
「他人の需要に応じるため」
→自分のためでなく、利用者のためにサービスを提供している
「電気通信設備を用いて」
→サーバーや回線設備を使ってサービスを提供している
「営む」
→ 月額料金や広告費などで対価を得ていれば該当
また、他人の通信を媒介しているか、という点も、「情報(このケースではメッセージ)の加工・編集をせず」、「送信時の宛先として受信者の指定」をしているため、該当します。
インターネット接続サービス
インターネット接続サービスの場合、電気通信事業を営む、という要件は問題なく当てはまるのはなんとなくお分かりかと思います。
問題は、「他人の通信を媒介」しているか、という要件です。
ここが少し混乱しやすいポイントで、 インターネット接続サービスの場合、「自分とユーザーの通信」でサービスを提供しているように見えますが、実態としてはユーザーがインターネット上の第三者(他のサーバや別のユーザー)と通信できるように橋渡しをしているわけです。
つまり、本質的には「他人(ユーザー)と他人(インターネット上の相手)の通信を媒介している」とも言えるため、届出の対象になるのです。
6|届出が不要なケース
ここからは混乱しがちな、届出が不要なケースもいくつか見ていきましょう。
SNSの運営
投稿を不特定多数に表示する機能(タイムライン表示など)のみが実装されており、返信機能やダイレクトメッセージ機能がない場合は、届出不要となるケースがあります。
なお、前記の場合も前年度の月間アクティブ利用者数の平均が1,000万以上となる場合、届出が必要となります。
オンラインショッピングサイト(ECモール)の運営
自社サイトのECではなく、ECモールを運営している事業者も、レビューや口コミ機能、サイト内検索機能などを実装していたとしても、基本的には届出不要です。
なぜなら、情報をやりとりできる「場」を提供しているのであって、「他人の通信を媒介」していないからです。
なお、出店者と顧客間など特定の利用者間でのダイレクトメッセージやチャット機能等を提供する場合は「他人の通信を媒介」していることになり、届出が必要となります。
メールマガジンの送付
企業が自社の広報活動の一環として、自ら購読者にメルマガを送るケースです。
これはそもそも「電気通信事業」ではなく、自社の本来業務の一部として通信手段を使っているだけと整理されます。よって届出が不要です。
なお、メルマガ配信サービスのように、発行者が作ったメルマガを、そのまま変更せずに読者へ届ける仕組みを提供しているケースは注意が必要です。
自分ではコンテンツを作らず(加工・編集を行わない)他人の通信を橋渡し(送信時の通信の宛先として受信者を指定している)しているので「他人の通信を媒介」にあたり、届出が必要になります。
なお、ここまで記載したケースはほんの一例です。
記載したような機能の有無だけで届出の要否を判断するのは難しく、サービスの仕組み全体を見て判断する必要があります。
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※記事の内容は2026年4月15日時点の情報に基づいています。
