2026.07.29
「自社で通信料を取っていないから届出は不要」か|電気通信役務の再販という考え方
自社のサービスの中で通信を使っているが、その通信は通信事業者のSIMを使っており、利用者から通信料を取っているわけではない。
通信を提供しているのは通信事業者であって、自社ではない。
こういう時、電気通信事業の届出は必要でしょうか。
結論から申し上げると、通信料を独立した名目で請求していなくても、届出が必要と判断されることがあります。
「通信料をもらっていないから届出は不要」とは限りません。
このあとの説明では、「再販」という言葉が繰り返し出てきます。
届出が必要かどうかを判断するうえで鍵になる考え方なので、まずは「再販」について説明させていただきます。
1|再販とは何か
再販とは、他の通信事業者から仕入れた通信を、自社のサービスとして利用者に提供することです。
自社で通信回線の設備を持っていなくても、通信事業者から回線やSIMを仕入れて、それを利用者に届けることができます。
たとえば、大手通信会社から通信を仕入れ、自社ブランドの格安SIMとして利用者に販売するサービスがあります。
これは、自社で通信網を持っているわけではなく、仕入れた通信を再び販売しているので、再販にあたります。
ここで大切なのは、再販をしている事業者は、利用者から見れば通信の提供者そのものだという点です。
利用者は、仕入れ元の通信会社ではなく、目の前のその事業者と契約し、その事業者に料金を払います。
だからこそ、再販をする事業者も、通信サービスの提供主体として、届出の対象になります。
2|なぜ「通信料を取っていない」だけでは判断できないのか
再販の考え方をふまえたうえで、本題に入ります。
電気通信役務の再販事業者として電気通信事業の届出が必要かどうかは、料金の名目ではなく、事業の実態で判断されます。
利用者への請求書に「通信料」という項目がないとしても、その通信の費用がサービス料金のどこかに含まれていることは珍しくありません。
たとえば、機器のレンタル料やサービス利用料、保守料の中に、通信にかかる原価が組み込まれている場合です。
このとき、表面的には通信料を請求していないように見えても、実質的には通信の対価を受け取っていると評価される余地があります。
行政庁は、この「実質」を広く捉える傾向があります。
名目がどうであれ、実質的に通信を提供して何らかの費用を受け取っているのであれば、通信サービスの提供主体とみなされ、届出が必要と判断されることがあります。
3|具体的な例
わかりやすい例が、SIM内蔵型のクレジット決済端末です。
この端末は、内蔵されたSIMで通信を行い、決済処理をします。
事業者は、通信をモバイル通信事業者から調達し、決済端末サービスとして施設や店舗に提供します。
利用者から受け取るのは、決済手数料や端末のレンタル料であり、通信料としての請求はありません。
一見すると、事業者自身は通信を売っているわけではなく、決済サービスを提供しているだけで、通信の部分を担っているのはモバイル通信事業者のように見えます。
つまり、再販にはあたらないと推定できそうです。
しかし、通信を調達して端末とともに提供し、その対価を受け取っている以上、通信サービスの提供主体と評価される可能性があります。
実際に弊所が担当したケースでも、このような形態の事業において、届出が必要と判断された例があります。
4|判断が分かれる境界線
届出が必要かどうかは、事業者が通信をどう扱っているかで変わります。
一つの目安は、通信について事業者が独自の値付けや条件設定をしているかどうかです。
通信事業者から仕入れたSIMやISPをそのまま提供するのではなく、料金やプラン、通信量や速度の条件を事業者が独自に決めてエンドユーザーに提供している場合は、通信の再販とみなされ、届出が必要になります。
一方、調達元の条件をそのまま使い、事業者が通信を独自の商品として値付けしていない場合は、提供主体とはみなされにくくなります。
ただし、この境界線は明確な線引きが難しく、個別の事情によって判断が変わります。
「独自の値付けをしていないから不要」と自己判断していても、費用の受け取り方(先述のようにサービス利用料といった請求の仕方をしている場合など)や事業の実態によっては、必要と判断されることがあります。
5|迷ったときの進め方
自社のサービスが届出の対象になるかどうかは、通信の使い方や料金の受け取り方を一つずつ確認しないと判断できません。
判断に迷う場合は、次の点を整理しておくと見通しが立てやすくなります。
通信を誰から調達しているか
利用者に何を提供し、何の対価として料金を受け取っているか
通信の料金や条件を自社で決めているか、調達元のまま使っているか
そのうえで、判断が微妙な場合は、専門家に相談したり、あるいは届出をしてしまうほうが安全かもしれません。
届出の費用自体は無料なため、取引先への信頼感を演出するために、届出が必要かどうか微妙なケースでも出しておくというクライアント様も実際にいらっしゃいます。
届出をせずに事業を始めてしまうと、あとから指摘を受けるリスクがあります。
「通信料をもらっていないから大丈夫」と決めてしまう前に、一度、事業の実態に即して確認することをおすすめいたします。
6|電気通信事業の届出のご相談はお気軽に
かとう行政書士事務所では、電気通信事業の届出について、要否の判断から書類の作成、提出までを一貫してお手伝いしています。
今回ご紹介したような、通信を使ったサービスが届出の対象になるかどうかの見極めは、事業の実態を一つずつ確認する必要があり、判断が難しいケースも少なくありません。
そうした微妙なケースこそ、実務の経験をふまえてご一緒に整理していきます。
ご自身のサービスが届出の対象になるかどうかご不安な場合は、お気軽にご相談ください。
