かとう行政書士事務所

2026.07.02

生成AIを利用したサービスと電気通信事業の届出|不要なケース・必要なケースを行政書士が解説

生成AIを利用したサービスと電気通信事業の届出|不要なケース・必要なケースを行政書士が解説

生成AIを組み込んだチャットボットや文章生成ツール、画像生成サービスなどを立ち上げる事業者が増えています。
開発やマーケティングに気を取られがちですが、意外と見落とされやすいのが 電気通信事業の届出の要否です。

「うちはただAIが応答するだけだから関係ない」と思っていても、サービスの設計次第では届出が必要になるケースがあります。
この記事では、生成AIを利用したサービスと電気通信事業届出の関係を、実務の判断ポイントに沿って整理します。

1|そもそも電気通信事業の届出とは

電気通信事業を営もうとする者は、電気通信事業法に基づき、原則として総務大臣への登録または届出が必要です。
回線設備を自ら設置しない多くのウェブサービス事業者は「届出電気通信事業者」に該当し、届出で足りるのが一般的です。

くわしくはこちらのコラムで解説をしています。ぜひご一読ください。

なお、届出が必要であるにもかかわらず届出をせずに事業を営んだ場合、電気通信事業法違反となり得ます。
「知らなかった」では済まされないため、サービス公開前の確認が欠かせません。

また、届出が不要な第3号事業であっても、電気通信事業法のすべての規律から外れるわけではありません。
検閲の禁止・通信の秘密の保護(同法第3条・第4条)は適用されますし、一定規模以上のサービスでは、いわゆる外部送信規律(同法第27条の12。クッキー等を用いる場合の利用者への通知・公表)の対象となることもあります。

2|生成AIを利用したサービスは届出が必要なのか

ここが最大のポイントです。
結論から言うと、「他人の通信を媒介」という要件に当てはまるかどうか、で判断が分かれます。

3|届出が不要となりやすいケース

利用者が入力した内容に対して、自社のAIが応答を返すだけのクローズドなサービスは、他人どうしの通信を媒介しているわけではありません。
この場合、他人の通信の媒介に当たらないため、第三号事業として届出は不要と整理されるのが一般的です。

  • ウェブ上で自社のAIチャットボットが質問に答えるだけのサービス

  • 文章・画像・音声などを自社AIが生成して返すだけのツール

これらは、いわゆる「他人の通信の媒介」に当たらず、届出が不要と考えられる典型例です。

少し複雑なケースも考えてみましょう。ここからは登場人物を、利用者(A)サービス提供事業者・自社(B)外部の生成AI事業者(C) の三者として説明します。

たとえば、利用者(A)からの質問に回答するために、チャットサービスを提供している自社(B)が外部の生成AI(C)を利用しているケース
一見すると、A・B・Cの三者が関わり、他人どうしの通信を媒介しているように見えます。

しかし、利用者(A)からすれば、質問の送信先はあくまで自社(B)であり、外部の生成AI(C)ではありません。
利用者(A)は「Bに質問を送っている」と認識しているため、通信は次のように評価できます。

  • A―B間の通信:A(質問を送信)→ B(質問を受け取る)。Bは受け取った質問を生成AI(C)に送信して回答を生成させる。

  • B―A間の通信:B(Cが生成した回答を受け取り、Aに送信)→ A(回答を受け取る)。

つまり、A―B間、B―C間のそれぞれが「自己と他人との間の通信」として成立しており、Bが利用者(A)と生成AI(C)の通信を媒介しているわけではありません。
このため、他人どうしの通信の媒介には当たらず、届出は不要と判断されるケースが多いといえます。

4|届出が必要となり得るケース

一方で、間に別の事業者が入ると注意が必要です。

チャットサービスを提供したい事業者(B)が、システム開発者(X)に依頼し、そのシステム開発者(X)が外部の生成AI(C)にBの情報を学習させて、Bのサービス向けのチャットサービスを提供する場合を考えます。
ここでは利用者(A)とC の間に、Bだけでなくシステム開発者(X)も介在します。

このとき、利用規約やサービス全体の実態から見て、利用者(A)が「事業者(B)に対して質問を送信している」と認識できない場合には、間に立つシステム開発者(X)が、利用者(A)と生成AI(C)との間の通信を媒介している と評価され、そのシステム開発者(X)に届出が必要となり得ます。

反対に、システム開発者(X)が「これは自社のサービスである」ことを前面に打ち出して提供しており、利用者(A)が「システム開発者(X)のサービスを利用している」と認識できる場合には、下記のようにそれぞれで自己と他人との間の通信を行っていると評価でき、届出が不要となるケースがあります。

  • システム開発者(X)― 利用者(A)

  • システム開発者(X)― 生成AI(C)

つまり、判断の分かれ目は「利用者(A)が誰を通信の宛先と認識しているか」にあります。
同じように外部の生成AI(C)を利用していても、サービスの見せ方や利用規約の記載によって、届出の要否が変わり得るのです。

5|判断で迷いやすいポイント

生成AIサービスの届出要否は、次のような点で判断が難しくなりがちです。

「誰が通信の宛先か」を実態で判断する必要がある

届出の要否は、サービス名や契約形式ではなく、利用者が実際に誰を宛先と認識しているかで判断されます。利用規約の記載、画面上の表示、ブランドの打ち出し方などを総合して、実態に即して見ていく必要があります。

間に入る事業者の役割にも注意する

自社と利用者の間に、システム開発会社などの別の事業者が介在する場合、その事業者が「他人どうしの通信を媒介している」と評価されることがあります。自社だけでなく、関与する各事業者について要否を確認しておくと安心です。

6|まとめ

生成AIサービスの電気通信事業届出の要否は、「他人どうしの通信を媒介しているか」で決まります。
そして実際の判断では、利用者が誰を通信の宛先だと認識しているかが大きな分かれ目になります。

自社のAIが応答を返すだけのサービスや、外部の生成AIを利用していても利用者が「自社に質問を送っている」と認識できるサービスは、第3号事業として届出が不要となりやすいといえます。

一方で、間にシステム開発者などが介在し、利用者がその事業者を宛先と認識できない場合には、間に立つ事業者が他人どうしの通信を媒介していると評価され、届出が必要となり得ます。

サービス設計は事業者ごとに千差万別で、登場する事業者の関係や見せ方を踏まえた個別の判断が求められます。

自社サービスが届出の対象になるか判断に迷う場合は、公開前に一度、専門家へご相談ください。
当事務所では電気通信事業の届出をはじめ、サービスの立ち上げに伴う各種手続きのご相談を承っています。

※記事の内容は2026年7月2日時点の情報に基づいています。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案についての法的判断を示すものではありません。具体的な届出の要否は、サービス内容に応じて個別にご確認ください。
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